結婚生活を振り返るなかで、「これ以上関係を続けるのは難しいかもしれない」「離婚という選択肢が頭をよぎるようになった」と感じたとき、多くの方は何から手をつければよいのかわからず、途方に暮れてしまいます。インターネットで調べても、情報が多すぎて、かえって不安が大きくなってしまうことも少なくありません。
離婚のご相談をお受けしていると、まず何をすればよいのか、全体の流れを整理してほしい、というお声をいただくことが少なくありません。離婚は、気持ちの整理と法的な手続とが同時に進んでいく、大きな転換点となり得る出来事です。ここでは、離婚を考え始めたときに知っておきたい手続全体の流れと、落ち着いて一歩を踏み出すためのポイントを順に見ていきます。
❶| 離婚を考え始めたときに、まず心に留めておきたいこと
離婚をしたいと思ったとき、すぐに役所へ離婚届を取りに行ったり、その場で相手に切り出したりしたくなるかもしれません。しかし、準備がないまま話を進めてしまうと、後になって条件面で思わぬ不利益を招くことがあります。
まずは、焦って結論を出そうとせず、これからどのような順序で進んでいくのかという全体の地図を頭に描いておくことが大切です。離婚の手続は、一般に夫婦の話し合い(協議)から始まり、まとまらなければ家庭裁判所の調停、それでも決まらなければ裁判へと進みます。まずは当事者間での話し合いを目指すのが基本の流れとなります。
❷| 手続の全体像(3つのステップ)
離婚の手続は、大きく3つの段階に分かれています。それぞれの特徴を知っておくことで、今ご自身がどの位置にいるのかを把握しやすくなります。
◉ステップ1・・・離婚協議(夫婦間の話し合い)
厚生労働省の人口動態統計によれば、離婚のおよそ9割は、夫婦で話し合って合意する協議離婚で成立しています。お互いが離婚に合意し、親権や財産分与、慰謝料などの条件面でも折り合いがつけば、離婚届を市区町村の窓口に提出することで離婚が成立します。
もっとも、離婚届は書いて出せばそのまま受理されるというものではありません。未成年のお子様がいる場合には、離婚後の親権者を定めておく必要があります(民法819条1項)。令和8年4月1日に施行された改正民法により、親権者は父母の双方とすることも選べるようになりました。なお、親権者が決まらないままでも、家庭裁判所に親権者の指定を求める調停や審判を申し立てていれば、離婚届は受理されます(民法765条)。
■ポイント ☛ 時間や手間の面ではもっとも負担の少ない方法ですが、後々のトラブルを防ぐために、決まった内容は離婚協議書や公正証書という形に残しておくことが大切です。特に養育費のように支払いが長く続くものは、強制執行を受け入れる旨の文言を付けた公正証書にしておくと、支払いが滞ったときに備えられます。
◉ステップ2・・・離婚調停(家庭裁判所での話し合い)
当事者間での話し合いが平行線をたどる場合や、相手が話し合い自体に応じない場合は、家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てることになります。なお、離婚について裁判を起こすには、原則としてまず調停を申し立てなければならないとされています(家事事件手続法257条1項)。調停は、話し合いの場であると同時に、その先の裁判に進むための前提となる手続でもあります。
■ポイント ☛ 裁判官と調停委員が間に入り、双方から交互に事情を聞きながら合意点を探る手続です。相手と直接顔を合わせずに済むよう配慮を求めることもできますので、感情的な対立が大きい場合でも、落ち着いて話し合いを進めやすくなります。
◉ステップ3・・・離婚裁判(訴訟)
調停でもお互いの主張が噛み合わず、合意に至らなかった場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起することになります。
■ポイント ☛ 裁判では、法律の定める離婚原因(不貞行為や悪意の遺棄など。民法770条1項)があるかどうかが審理されます。判決による解決のほか、途中で和解が成立して終わることもあります。話し合いの手続とは異なり、主張を裏づける証拠を整理しておくことが重要になります。
❸| 手続に向けて、今から準備しておきたいこと
実際に話し合いや手続を進める前に、ご自身の足元を固めておくための準備があります。いずれも、いざというときにご自身を守ることにつながります。
◉夫婦の財産や状況の把握
結婚生活のなかで築いた財産(預貯金、不動産、保険など)や、これまでの婚姻生活の状況を整理しておきましょう。通帳の写しなど財産に関する資料は、別居してしまうと手元で確認することが難しくなることも多いため、同居しているうちに把握しておくと、その後の財産分与の話し合いを進めやすくなります。
◉離婚後の生活基盤のイメージ
離婚したあとの住まいや仕事、収入の見通しについて、大まかでも構わないので考えておくことが安心につながります。お子様がいる場合は、親権のほか、養育費や親子交流(面会交流)についてどのような希望を持っているのかを整理しておきましょう。取り決めがないままでも離婚届は受理されますが、離婚後に改めて話し合うのは難しくなりがちですので、離婚の際に決めておきたい事柄です。
◉気持ちや経緯の整理
なぜ離婚を考えるようになったのか、これまでどのような出来事があったのかを、日付とともに時系列でメモにまとめておくと、いざというときに気持ちを落ち着けて相手や弁護士に伝えることができます。その後の話し合いや手続の場面でも役立ちます。
■まとめ|一人で抱え込まず、早い段階での相談を
離婚という大きな決断の前に、不安や迷いを抱えるのは自然なことです。弁護士への相談は、裁判になってからでなければできないというものではありません。
まだ離婚するかどうか迷っている、何から手をつければよいか整理したい、という段階でのご相談も多くお受けしています。弁護士などの専門家に話を聞いてもらうことで、頭の中が整理されることは少なくありません。これからの人生をどのように歩んでいくか。その大切な第一歩を、どうか一人で抱え込まずに、安心できる環境で考えてみませんか。いつでもお気軽にご相談ください。
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弁護士 佐藤栄晃(Sato Hideaki)・・・神奈川県弁護士会所属(登録番号56339)
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